12月会長先生ご法話に寄せて

今月の会長先生のご法話は「人さまと、ともに幸せに―六波羅蜜」です

〇煩悩即菩提(ぼんのうそくぼだい)

 世俗(せぞく)の暮らしをするなかで、この煩悩を具(そな)えているままに、だれもが苦しみや悩みから解放されると教えるのが、法華経(ほけきょう)をはじめとする大乗仏教(だいじょうぶっきょう)です。むしろ、煩悩があればこそ人格の向上をめざし、生きること死ぬことに迷えばこそ真理を求め、その結果、煩悩具足(ぐそく)の私たちが、苦しまないばかりか、いっそ煩悩をよりよく生かす智慧(ちえ)に転じることができるという、ほんとうの意味でみんなが救われる教えに出会えたのです。

~中略~

 六波羅蜜(ろくはらみつ)教えもその一つです。ふり返ってみると、六つの徳目はどれも、欲や怒りや執着心(しゅうちゃくしん)などの煩悩と表裏(ひょうり)一体の実践で、そこには自己中心の心を菩薩(ぼさつ)のはたらきへと転ずるキーワードがつねに見え隠(かく)れしていたと思います。いま生かされているこの身、この心を、怒りや執着にではなく、菩薩の実践へとふり向けるスイッチ―それは、「利他(りた)」の心です。

 我が家は11月27日に99歳(白寿)を迎えた義母を筆頭に、下は5歳の孫娘、家族7人で暮らしています。この一年を振り返る中、2人の孫達はどんどん成長し、反対に義母はひと月ごと、いや一日一日が変化の多い一年でした。認知の度合も月日を追うごとに変化し体力も落ちていくのがわかります。「おかあさん、おかあさん」と居ないと不安になり名前を呼ぶ、そんな状態が続くと、「いつまで続くんだろう」と思う自分がなさけなくなります。そんな時、大変な状態の親さんをお世話されているサンガの仲間を思い出し、みんな頑張っている、と思うと折れる心を戻す勇気をもらいます。仲間のおかげさまです。

遠く離れた実家の母も95歳認知も進んでいます。母のお世話をし、ささえてくれている妹家族に感謝せずにはいられません。「いつもありがとう」と感謝を伝える事ができます。母に対して親孝行は直接できないけど義母のお世話をさせて頂く事が、私の親孝行なんだと思えるのです。

〇「衆生と共に」を胸に

~中略~

 浄土真宗(じょうどしんしゅう)の金子大栄(かねこだいえい)師は、この「衆生と共に」の言葉をとりあげて「いかなる自利(じり)の行(ぎょう)も衆生と共にであり、したがってまたいかなる利他の行も、自身の道とするもの、それこそ菩薩行というもの」と述べています。さらに「衆生と共に」という願いがあれば、見聞きするものごとはすべて正法(しょうぼう)を教えるものとなり、気づいたことはどれも道を求める心を後押しする力になるといって、「衆生と共に」生きる菩薩の人生は「そのままに道場である」と結ぶのです。六波羅蜜の実践の醍醐味(だいごみ)は、まさにここにあるのでしょう。

~中略~

 一人の力ではどうしようもない現実があるとしても、私たち一人ひとりがどう生きるかを模索(もさく)し、身近でできることにとりくむひたむきな思いが、仏の大きなはたらきと一つになることを私は信じています。

 息子夫婦孫、4人で夜寝る前必ず、ご宝前でごあいさつ、一日の感想を話し床に入ります。仏さまを中心にと教えて頂いてますが、ご先祖様への感謝を型からでも身につけている息子達です。日々の中で自分中心に自分の考えを基準にすると、あれもこれも違うと見がちですが、違いには理由も考えも有る、何で?と聞いてみる。そんな行動の中に理解が生まれる。待つ、おしつけない、見方はいろいろある。そんな心の機微(きび)が感じられる自分を目標に感謝で一年をしめくくりたいと思います。

                                    合掌

教務部 H.Y

(太字は会長先生ご法話 佼成12月号より引用)当月の会長先生のご法話はこちらからご覧いただけます。