2月会長先生ご法話に寄せて

未来を育てる

〇「ガザガザした世の中」をつくっているのは……
 最近では、給食を食べるとき「うちの子に、いただきますと言わせないでほしい」と申し入れるお母さんがいると、遺伝子工学の権威(けんい)として知られた村上和雄(むらかみかずお)さんのご著書にありました。給食費を払っているから、というのがその理由です。
 しかし、みなさんもご存じのように、「『いただきます』は、自分の命のために、他の生物の命を『いただいている』ことを、食事のたびに意識し、感謝する言葉」(村上和雄)です。あらゆる命をはぐくむ大自然、そして神仏、さらには食卓に食物を届けてくださる多くの方への感謝の意味をこめた言葉であり、それはつまり「拝む心」のあらわれです。
 そのことを忘れて、功利(こうり)や合理性だけを見る親や大人の心や態度が、次代を担(にな)う人たちの心に大きく影響することが心配でならないのは、私だけではないでしょう。

 以前に、教会で食事をいただくときに、「食前感謝のことば」、「仏さま、自然の恵み、多くの人に感謝して、いただきます」と教えていただきました。それから食事のたびに、心をこめて「いただきます」と言わせていただいています。「食前感謝のことば」を教えていただいたことを、家族にも伝えさせていただきました。ある時、娘とささいなけんかをして、娘が不機嫌なことがありました。娘はしばらく口をきかなかったのですが、食事の時、不機嫌な声でしたが「いただきます」と言ったので、私が「ちゃんといただきますって言ってくれるんやね」と言うと、「大事なことやから」と言いました。私が「食前感謝のことば」伝えた思いが娘に届いていて、食事への、感謝の気持ちが育っているのを感じて嬉しく思いました。

〇未来は「いま・ここ」にある
 ただ、私はこう思うのです。日本では多くの人が正月になると神社や寺院に詣(もう)でますし、お彼岸(ひがん)がくればお墓参りをし、お盆には先祖の御霊(みたま)をお迎えして手を合わせます。また、日本には神道も仏教も「論語」を中心とする儒教も浸透(しんとう)していれば、西洋の習俗(しゅうぞく)も受け入れるといった具合に、私たちは情操を豊かにする教えを数多くいただき、学び、それらを調和させながら歴史を刻んできたのです。
 もちろん日本だけでなく、尊(とうと)いものを拝む宗教文化はどの国にもあります。つまり、人間にはみな拝む心が具(そな)わっているといえるのです。であれば、そのことを忘れている人に拝む心をとり戻してもらい、子どもには尊いものを敬(うやま)い拝む親や大人の生活実践の姿を見せていくことが大事です。毎日の読経供養(どきょうくよう)は、その大切な機会であります。
 なぜなら、未来の出発点は「いま」だからです。いま・ここで私たちが心を磨き、できることを精いっぱい実践することが、次代を担う子や孫の心を育て、みんながお互いの仏性(ぶっしょう)を信じあえる「未来を育てる」ことになるのです。見方を変えると、私たちが成長し向上すればするほど、より明るい未来が築かれるということです。

 年頭のご法話でも、会長先生は次代を担う子や孫の心を育てる大切さを教えてくださっています。人を育てる、その基本は何より家庭の教育にあり、斉家(家庭を斉えること)を通して、しっかりした人間教育がなされて初めて、学校での教育もより充実したものとなり、本当の意味で「人を植える」ということに結びつくからですと教えてくださいます。
私も、その役割がしっかりと果たしていけることができるように、尊いものを敬い拝む心を親として、大人として日常生活の中で見せていきたいと思います。そして毎日の実践を通して心を磨き、明るい未来を信じて日々精進させていただきます。

合掌         東近江支部 O.Y

(太字は会長先生ご法話2月号より引用)

当月の会長先生のご法話はこちらからご覧いただけます。