9月会長先生ご法話に寄せて

9月会長先生ご法話に寄せて

今月の会長先生のご法話は『欲ばりは煩いのもと』です

◯貪りが招くわざわい

 「天高く馬肥(こ)ゆ」といわれる秋は食欲の秋ともいわれます。暑さがやわらぎ、食欲も増してなんでもおいしくいただけるのはありがたいものです。ただし、食べすぎて後悔することがないよう、ほどほどを忘れずにいたいものです。食欲旺盛で、少しの体重がふえたという悩みなら食事の量を控えることで解消しそうですが、釈尊は「いろいろな欲望を貪(むさぼ)り求めると、諸々の煩悩が彼に打ち勝ち、危ない災難が彼を踏みにじる」という表現で、貪るほどの欲深さがいかに身心にダメージを与えるかを教えてくださっています。(中略)

 金銭や財産に対する過剰(かじょう)な欲とか愛欲へのとらわれなどが自他の妬み(ねたみ)や怒(いか)りや憎(にく)しみを生み、それがもとでトラブルという災難が降りかかってくるということでしょう。あるいは、「あの人は欲ばりだから」と疎(うと)まれたりするストレスが、体調にも影響するという災難も考えられます。釈尊は、「貪欲(とんよく)の生じた人が、もしも欲望を果たすことができなくなるならば、彼は矢に射(い)られたように悩み苦しむ」ともいわれてます。(中略)

 利他(りた)の心を忘れずに欲望をほどほどに抑(おさ)える日ごろの精進(しょうじん)が欠かせないのです。

 会長先生のご法話を拝読させて頂き、最近の私の心に歯止めを掛けて頂けた思いでいます。50才手前で身体の不良により職場が変わり、以前のような働きが出来なくなるとやはり収入が減るものですが、出来ていた事が出来なくなると色々な欲が出て、歌の一節ではないですが、「あれもほしい、これもほしい、もっとほしい、もっともっとほしい」みたいな欲望を貪るようになっていました。こんな体にさえならなければもっと自由が手にできていただろう・・・もっといろんな物が手にできただろう・・など物足りなさばかりが心にあるとご法話にあるように自他への妬み、怒り、憎しみが生まれ、トラブルにならなくても、それがストレスになり体調への大きなダメージになっていることに間違いありません。

 まず人さま、周りの人を幸せにしたいという利他の心を持ち続けるためにはどうしたらいいのだろうか。

◯足ることを喜べる幸せ

 ただ、私たち人間の欲そのものが悪いわけではありません。釈尊は「すべての人を救いたい」という大欲(たいよく)をいだかれ、慈悲心(じひしん)と利他の思いに根ざすその大欲を追い求めて、ついにだれもが幸せになれる心理・法を悟られました。もちろん、釈尊と同じ欲は私たちの命にも組みこまれていて、それが人類の発展や向上の源(みなもと)にもなってきたのです。しかし、欲も制御がきかなくなると「煩悩」に変わり、文字どおり煩(わずら)い悩むことになります。思うとおりにならなくて苦しみ、自分の満足を得るために見境(みさかい)がなくなって人間関係をそこなうなど、さらなる苦に苛(さいな)まれるのです。そうならないよう、仏教では「少欲知足(しょうよくちそく)―欲を抑えて足(た)ることを知る―の大切さを教えています。これが実践できれば、欲望の暴走による身心のわずらいも遠ざけられるのでしょうが、わかっていてもそれができない私たちです。そこでもう一つ、「少欲」の「少」を「小」の字に変えた「小欲知足」という表現をご紹介します。印象はほとんど変わりありませんが、パーリー語 〔インドの古い言葉〕 の「小欲」と「知足」にあたる言葉の意味にしたがうと、「小欲知足」とは「必要十分な量であることに喜んでいる」という意味あいになるようです。三蔵法師(さんぞうほうし)の名で知られる玄奘(げんじょう)は、「知足」の意味するところを深くとらえて「喜足(きそく)」と言い換え、足ることが喜びと伝えています。必要十分な欲が満たされることこそが喜びと知ると、足ることの喜びを味わいたくて、自然に欲を抑えられそうです。しかも、足ることを知りなさいと諭(さと)されるよりも受け入れやすく、気持ちを楽にして欲のコントロールができるのではないでしょうか。そして何よりも、必要十分な量で喜べるほど健康的で幸せな生き方はないと、私は思うのです。

 幼い頃からよく親から「腹八分目がいいのよ」といわれましたが、自分の腹の八分目は人それぞれで、誰かに量を決められるものではないなどと諭されることに卑屈的になるものでしたが、「喜足」という 「足ることの喜びを味わう」ができれば健康的で幸せな生き方が出来ると教えて頂きました。「これだけしかない」を「これだけある」のような心の持ち方を持ち続けることによりストレスもなくなり、周りに気を配れる余裕を生まれるのだと教えて頂きました。必要十分な欲で満たされることこそが喜びと感じていけるよう、日々精進させて頂きます。有難うございました。

  合掌           日野支部 壮年部 N・O

 (太字は会長先生ご法話  佼成9月号より引用)   

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